「最近、葬儀用のブラックフォーマルとしてロングスカートを選ばれるお客様が、全体の約6割を超えています」と語るのは、大手礼服専門店の店長を務める佐藤さんです。ひと昔前までは、膝丈のタイトスカートにノーカラージャケットというスタイルが定番でしたが、ここ5年から10年でその傾向に大きな変化が起きていると言います。その背景には、女性の美意識の変化と、葬儀スタイルの多様化があります。佐藤さんによれば、1番の理由は「足を隠したい」という実用的なニーズです。年齢を重ねるごとに膝周りの露出に抵抗を感じる方が増えており、ロングスカートはそれらの悩みを一瞬で解決してくれる魔法のアイテムなのです。また、冷房対策や防寒対策としての機能性も、賢い現代の女性たちに支持されている要因の1つです。トレンドの具体的な内容について伺うと、「現在は110センチから120センチ程度の総丈があるアンサンブルが1番人気です。特にワンピースタイプで、上からジャケットを羽織っているように見えるデザインは、ウエストの締め付けがなく、しかもロングスカートの優雅さを最大限に引き出せると好評です」とのことでした。また、素材の進化も見逃せません。ロングスカートは面積が広いため、生地の質感が全体の印象を左右しますが、最近のハイテク素材は、深い黒を維持しつつ、シワになりにくく、しかも家庭で洗濯できるものまで登場しています。店長の佐藤さんは、ロングスカートを着用する際のアドバイスとして「バッグやパールのネックレスとのバランス」を強調します。スカートが長い分、重心が下に下がりがちなので、小ぶりのバッグを持ち、視線を上に集めることで、全身のスタイルを良く見せることができるそうです。また、最近では家族葬などの小規模な葬儀が増えており、より落ち着いた、あるいは少しカジュアルダウンした「平服」としてのロングスカートの需要も高まっています。しかし、佐藤さんは釘を刺します。「どんなに自由な葬儀であっても、黒の濃度と光沢感だけは妥協してはいけません。ロングスカートという面積の広い服だからこそ、生地の良し悪しが一目で分かってしまうのです」。専門店ならではの視点で語られるロングスカートの奥深さは、参列する側の心構えを改めて正してくれるものでした。トレンドを追いながらも、守るべき伝統を忘れない。その絶妙なバランスが、現代のブラックフォーマルには求められています。
ブラックフォーマルの専門店店長に聞くロングスカートのトレンド