私は葬儀の花を専門に扱うフローリストとして、これまで20年以上にわたり3000件を超える祭壇の制作に携わってきました。私たちの仕事は、単に花を並べることではなく、故人の人生という壮大な物語を1000本以上の花を使って表現する芸術的な作業です。1番神経を使うのは、打ち合わせで伺った遺族の想いをいかに具現化するかという点です。例えば、登山が趣味だった方の葬儀では、白いユリを山頂の雪に見立て、緑の葉物で険しい山脈のラインを作り上げました。また、海を愛した方には、デルフィニウムやブルースターといった青い花を波のように配置し、潮の香りが漂ってくるような空間を目指しました。私たちの厨房とも言える作業場では、通夜の開始時間から逆算し、花の開き具合を調整するために1度単位の温度管理を徹底しています。開ききった花は豪華ですが、葬儀の2日間を美しく保つためには、6分咲きの状態で会場に持ち込むのが1番の技術です。最近のトレンドは、従来の形式に囚われない自由なデザインですが、それでも基礎となる和花の扱い、特に菊の葉を1枚ずつ整えるような地道な作業こそが、祭壇の格調を決定づけます。インタビューの中でよく聞かれるのは「悲しい現場で辛くないですか」という質問ですが、私は逆に、花を通じて遺族の心が少しずつ解きほぐされていく過程に立ち会えることに、この仕事の真の価値を感じています。祭壇が完成し、遺族の方が会場に入られた瞬間に「まるでお父さんがそこにいるようです」と涙ながらに微笑んでくださるとき、私たちの全ての苦労が報われます。1つひとつの花には命があり、それはいつか枯れてしまいますが、その瞬間に感じた美しさと感動は、参列者の心の中に永遠に生き続けます。私たちは、死という絶対的な別れの場面に、花という生命の輝きを添えることで、希望のバトンを繋いでいるのだと確信しています。これからも、1本1本の茎を大切に扱い、故人の魂に届くような最高の祭壇を作り続けていくつもりです。花は言葉を持たないからこそ、誰よりも雄弁に愛を語ることができるのです。そのためにも、日々の鍛錬と感性の磨き込みを怠ることはありません。
葬儀専門のフローリストが語る祭壇制作の裏側と情熱