葬儀の現場で1000件以上の式を指揮してきたディレクターとして言わせていただければ、会場の座る位置の設定こそが、式全体の成功を左右する「設計図」です。私たちの仕事は、単に椅子を並べることではありません。故人と参列者の間にどのような心理的距離を創り出すか。そのための座る位置を計算し尽くすことが求められます。1番神経を使うのは、やはり親族席の配列です。血縁関係は単純な数字だけでは測れません。仲の悪い兄弟同士を隣の座る位置にすべきか、あるいは少し離すべきか。こうしたデリケートな人間関係を汲み取りながら座る位置を提案するのは、ディレクターの腕の見せ所です。会場の入り口で、戸惑っている参列者の表情を見れば、私たちの座る位置の案内が適切だったかどうかが瞬時に分かります。スムーズに座る位置へ誘導できることは、遺族にとっても精神的な安心材料となります。また、一般参列者の座る位置についても、空席が目立たないように前から順に詰めていただく「現場の調整」が欠かせません。座る位置がバラバラだと、会場全体のエネルギーが散漫になり、式の緊張感が損なわれてしまうからです。プロのディレクターは、式の進行に合わせて座る位置のバランスを保ち、参列者全員の視線が自然に祭壇へ向くように空間をコントロールします。また、照明や音響と座る位置の関係も重要です。弔辞を読む方の座る位置は、マイクまでの導線が最も短く、かつスポットライトが綺麗に当たる場所に設定します。座る位置1つをとっても、そこには建築学的な視点と心理学的なアプローチが融合しています。私たちが作る座る位置のマップは、故人の一生を讃えるための舞台装置なのです。お客様から「今日はとても落ち着いてお別れができました」と言っていただけるのは、座る位置という目に見えない秩序が正しく機能した証拠です。座る位置選びに迷う参列者の皆様には、ぜひ私たちプロを信頼していただきたい。1人ひとりに用意された座る位置は、あなたが故人と向き合うための聖域なのです。これからも、私たちは座る位置という名のバトンを繋ぎ、最期を飾るにふさわしい最高の空間を提供し続けます。座る位置が変われば、景色が変わり、心の持ちようも変わります。その魔法を信じて、1枚1枚の椅子を今日も丁寧に並べています。