出棺の儀式を終え、霊柩車がクラクションと共に走り去った後、全ての参列者がその後の行程に進むわけではありません。故人様の最後の旅路である、火葬場までの道のりに同行し、最期のお別れに立ち会うことができるのは、原則として、ご遺族・ご親族、そして故人と特に親しかったごく一部の方々に限られます。この「火葬場への同行」は、誰でも自由に参加できるものではなく、そこには明確な理由と、守るべきマナーが存在します。まず、同行者が限定される最も現実的な理由として、移動手段の制約があります。ご遺族は通常、霊柩車とは別に、マイクロバスなどの送迎車を手配します。このバスの定員には限りがあるため、必然的に乗車できる人数は限られてきます。また、それ以上に重要な理由として、火葬場での儀式が、よりプライベートで、近親者のみで行われるべき、極めてデリケートな時間であるという点が挙げられます。火葬炉の前での最後の対面や、ご遺骨を拾い上げる「骨上げ」の儀式は、ご遺族が故人の「死」という現実と、最も直接的に向き合わなければならない、精神的に非常に重い時間です。その場に、あまり関係性の深くない一般参列者がいることは、ご遺族にとって大きな心理的負担となりかねません。では、誰が同行するのでしょうか。基本的には、喪主、故人の配偶者、子、孫、両親、兄弟姉妹といった、三親等くらいまでの近親者が中心となります。友人・知人の方が同行を希望する場合は、決して自己判断で行動してはいけません。必ず事前に、喪主やご遺族の代表者に「もし、ご迷惑でなければ、火葬場までお見送りさせていただいてもよろしいでしょうか」と、控えめに許可を求めるのがマナーです。ご遺族から「ぜひ、ご一緒にお願いします」と声をかけられた場合は、ありがたくその申し出を受け、同行させていただきます。同行しない一般参列者は、出棺を見送った後、その場で解散となります。その際は、ご遺族に「本日はお疲れ様でございました」と、労いの言葉をかけ、静かにその場を辞去します。火葬場まで見送るという行為は、故人との最も濃密な最後の時間を共有し、その魂の旅立ちを間近で見届けるという、特別な役割を担っているのです。
最後の旅路に寄り添う、火葬場まで見送る人の選び方