2023年の春に88歳で天寿を全うした祖母の葬儀は、本人の強い希望により近親者のみの家族葬で執り行われました。祖母は生前、自宅の小さな庭で四季折々の花を育てることを何よりの楽しみにしており、特に5月に咲き誇る真っ赤なカーネーションと淡い紫色の藤の花をこよなく愛していました。私たちは葬儀を計画する際、1番のこだわりとして、従来の白い菊を中心とした祭壇ではなく、祖母が大切にしていた「庭の風景」を再現した花祭壇を作ってもらうことに決めました。葬儀社のプランナーの方は私たちの想いを真摯に受け止めてくださり、季節外れではありましたが、温室育ちの立派なカーネーションと、祖母のイメージにぴったりの色とりどりの洋花を100本以上用意してくれました。会場に入った瞬間、そこには葬儀場特有の重苦しさはなく、まるでお花畑の中に祖母が眠っているような温かな光景が広がっていました。参列した12人の家族は、誰からともなく祖母との花の思い出を語り始め、涙の中にも穏やかな笑顔がこぼれました。出棺の際、棺の中に花を入れる「別れ花」の時間には、用意された全ての花を使い切り、祖母の姿が見えなくなるほどに敷き詰めました。1人ひとりが「ありがとう」と声をかけながら花を手向ける時間は、形式的な読経よりも深く私たちの心に刻まれ、祖母を失った喪失感を優しく包み込んでくれるようでした。費用は通常の祭壇より少し高くなりましたが、祖母がこれほどまでに花に愛されていたことを再確認できたことは、私たち家族にとって何物にも代えがたい救いとなりました。葬儀において花は単なる飾りではなく、故人の個性を映し出し、遺された人々の心を繋ぐための大切な媒介者なのだと痛感した2日間でした。もし祖母が空から見ていたら、きっと「綺麗に飾ってくれて嬉しいよ」と自慢の笑顔を見せてくれたに違いありません。花を通じて故人と対話するという経験は、悲しみを乗り越えて前を向くための大きな力になりました。葬儀の形が多様化する現代において、1人ひとりの想いを花に託すという選択は、最も人間らしく温かな供養のあり方ではないでしょうか。15年後、20年後になっても、あの色鮮やかな祭壇の風景を思い出すたびに、祖母の温もりを感じることができると確信しています。
家族葬で故人の大好きな花に囲まれて見送った体験記