遠方に住んでいる、重い病気を患っている、どうしても外せない仕事がある。人生には、大切な人の訃報に接しながらも、やむを得ない事情で葬儀に駆けつけることができないという、辛く、もどかしい状況が訪れることがあります。「最後のお見送りもできなかった」という後悔や罪悪感は、時に深く、長く、その人の心に影を落とすかもしれません。しかし、物理的にその場にいることだけが、故人を見送る唯一の方法ではありません。たとえ会場に行けなくても、あなたの心を込めた弔意を伝え、自分自身の心の中で故人を見送る方法は、いくつも存在するのです。まず、社会的な弔意の示し方として、すぐに手配できるのが「弔電」です。NTTやインターネットの電報サービスを利用すれば、お悔やみの言葉を迅速に斎場へ届けることができます。また、葬儀社に連絡を取り、「供花」や「供物」を贈ることも、祭壇を飾り、ご遺族を慰める、温かい心遣いとなります。「香典」は、後日、お悔やみ状を添えて、現金書留で郵送するのが正式なマナーです。そして、何よりも大切なのが、あなた自身の心の中での「見送り」です。葬儀や出棺の時間が分かっているならば、その時刻に合わせて、故人がいるであろう方角、あるいは浄土があるとされる西の方角を向いて、静かに手を合わせ、故人の冥福を祈る時間を作りましょう。故人との楽しかった思い出を一つ一つ心の中に蘇らせ、好きだった音楽を聴いたり、一緒に写っている写真を見返したりすることも、あなただけの、尊い追悼の儀式です。心の中で、故人に感謝の言葉や、伝えたかった想いを語りかけてみてください。近年では、インターネットを通じて葬儀の様子をライブ配信する「オンライン葬儀」も増えており、遠隔地からでも儀式に参加できる機会も生まれています。そして、葬儀が終わってから、ご遺族の都合の良い時期を見計らって、改めてご自宅へ弔問に伺い、お線香を一本あげさせていただく。その時には、きっと、ゆっくりと故人の思い出を語り合うことができるでしょう。大切なのは、物理的な距離ではありません。故人を想い、その旅立ちを祈る、あなたの誠実な気持ちこそが、何よりも尊い「見送り」なのです。
会場に行けなくても心はそばに、私だけの見送りの形