父の葬儀を終え、一週間の忌引き休暇が明けた朝。私の足取りは、正直、少し重いものでした。深い悲しみはもちろんですが、それと同時に、長い間職場を離れていたことへの申し訳なさや、同僚たちにどう顔を合わせれば良いかという、一抹の不安があったからです。休暇中、上司や同僚からは、私の状況を気遣う温かいメッセージがいくつも届いていました。そして、葬儀の祭壇には、私の所属する「営業三課 有志一同」と書かれた、立派な供花が飾られていました。その温かい心遣いが、どれほど私の心を慰めてくれたか分かりません。だからこそ、復帰初日は、きちんと感謝を伝えなければならない。そう思い、私は出社前に、デパートの地下にある、少しだけ高級な洋菓子店に立ち寄りました。選んだのは、様々な種類のクッキーが30枚ほど入った、個包装の詰め合わせです。これなら、甘いものが好きな人も、そうでない人も、それぞれが好きな時に手に取れるだろう。そんなことを考えながら、私はそれを手に、会社のドアを開けました。朝礼が始まる前、私は課長の元へ向かい、まずは休暇をいただいたことへの感謝と、葬儀が無事に終わったことを報告しました。そして、課長の許可を得て、部署の全員の前で、改めて挨拶をさせてもらいました。「皆様、この度は、父の葬儀に際し、立派なお花までいただき、本当にありがとうございました。皆様の温かいお心遣いに、家族一同、心より感謝しております。不在の間、ご迷惑をおかけしましたが、今日からまた、精一杯頑張りますので、よろしくお願いします」。そう言って深く頭を下げ、持参したお菓子の箱を差し出すと、同僚たちから「大変だったね」「無理するなよ」という、温かい言葉と拍手が返ってきました。その瞬間、私の心の中にあった不安は、すっと溶けていきました。たかがお菓子、されどお菓子。その箱の中には、私の言葉だけでは伝えきれない、感謝の気持ちが詰まっていたのだと思います。そして、同僚たちがクッキーを頬張りながら「これ、美味しいね」と笑いかけてくれた時、私は、ようやく日常に戻ってこられたのだと、心から感じることができたのです。
私が休暇明けに持参した、感謝のお菓子