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取引先からの供花、ビジネスとしての礼儀
故人が会社の役員であったり、長年取引のあった重要な顧客であったりした場合、自社だけでなく、多くの取引先企業からも供花が寄せられます。このような、社外の企業からいただいた供花に対するお礼は、遺族としての個人的な感謝に留まらず、会社としてのビジネス上の礼儀という側面も併せ持つため、より一層、丁寧かつ迅速な対応が求められます。まず、葬儀が終了したら、なるべく早い段階で、供花をいただいた取引先企業のリストを正確に作成することが不可欠です。葬儀社に依頼すれば、芳名帳や供花の札を基にリストを作成してくれます。このリストを基に、まずは電話で一報を入れるのが望ましいでしょう。会社の担当部署(例えば、故人が所属していた営業部など)の上司や担当者から、取引先の窓口となっている担当者へ、「先日の〇〇の葬儀に際しましては、立派なご供花を賜り、誠にありがとうございました。滞りなく葬儀を終えることができました」と、速やかに御礼の連絡を入れます。これは、ビジネス上の関係を円滑に保つ上で非常に重要です。その上で、後日、改めて正式な礼状を送付します。この礼状は、喪主の個人名で出す場合と、会社の代表者(社長)と喪主の連名で出す場合があります。故人が会社の代表であった場合や、会社として特に丁重な謝意を示したい場合は、連名で出すのがより正式な対応となります。文面は、一般的な礼状の構成に準じますが、結びの言葉として、「今後とも、亡き〇〇同様、変わらぬご厚誼を賜りますようお願い申し上げます」といった一文を加え、今後のビジネス関係の継続を願う気持ちを示すことが大切です。取引先からの供花に対しても、原則として品物でのお返しは不要です。むしろ、お中元やお歳暮といった季節の挨拶の際に、担当者が訪問し、改めて直接お礼を述べるなど、ビジネス上のコミュニケーションの中で、感謝の気持ちを継続的に伝えていくことが、何よりも心のこもった「お返し」となるのです。